はじめに
壁量計算にて存在壁量が必要壁量より多いことが確認できれば、次は壁配置バランスをチェックします。
壁配置バランスのチェックには、四分割法と偏心率のどちらかで確認する必要があります。
今回は四分割法について計算していきます。
↓この本も参考にしています。
四分割法とは
四分割法は、耐力壁の配置を確認する簡便な方法として2000年の基準法改正に定められました。
各階X方向とY方向に4等分割し、その両端部分(1/4側端部分)の存在壁量と必要壁量を計算し、存在壁量を必要壁量で除した数値(壁量充足率)が1を超えればOKとなります。
また、壁量充足率が1以下の場合は、壁量充足率の小さい方を大きい方で除した値(壁率比)が、0.5以上であることを確認します。
四分割法の検定は2段階に設定されています。
『検定1』を満たせばその時点で検定は終了します。
『検定1』を満たさない場合は『検定2』を行い、条件を満たしていれば終了となります。
存在壁量/必要壁量=壁量充足率(大)
存在壁量/必要壁量=壁量充足率(小)
【検定1】壁量充足率≧1.0
【検定2】壁率比=壁量充足率(小)÷ 壁量充足率(大)
壁率比≧0.5
壁量充足率とは・・・側端部分の存在壁量が必要壁量に対してどの程度足りているかを知る
壁率比とは・・・壁量がどの程度偏っているかを知る
側端部分の必要壁量の算出
建物の平面を1/4ごとに区切り、両端の1/4部分を『側端部分』という。
各階・各方向の側端部分の必要壁量を算出します。
側端部分の地震力に対する必要壁量(cm)=側端部分の床面積(m2)x床面積あたりの必要壁量(cm/m2)
1階の側端部分の床面積は、下図の赤枠範囲になります。


2階の側端部分の床面積は、下図の桃枠範囲になります。


側端部分の床面積は下記の通りとなります。

面積表をまとめると下表のようになります。
階 | 方向 | 位置 | 側端部分の床面積(㎡) |
① | |||
2 | X | 上 | 13.25 |
下 | 13.25 | ||
2 | Y | 左 | 13.25 |
右 | 13.25 | ||
1 | X | 上 | 11.68 |
下 | 19.88 | ||
1 | Y | 左 | 13.25 |
右 | 19.88 |
2階建てでも、下屋部分は平屋建てとして計算します。
2階外壁の中心が1階の1/4 ライン上にある場合は、平屋の必要壁量を用いて構いません。
わずかでも2階がかかっている場合は、2階建ての1階部分の必要壁量を用います。


側端部分の存在壁量の算出
側端部分の存在壁量を算出します。1/4ライン上にある耐力壁も側端部の存在壁量に算入します。
側端部分の存在壁量(cm)={耐力壁の壁倍率 x 耐力壁の長さ(cm)}の合計
側端部分の存在壁量の算出に当たっては、準耐力壁等の壁量が必要壁量の1/2以下であるため準耐力壁等は算入しない。
1階X方向の側端部分の存在壁量は、上側は赤Aが壁倍率2倍x長さ91cm。茶Aが壁倍率2倍x長さ136.5cm。下側は赤Aが壁倍率2倍x長さ182cm。緑Bが壁倍率4倍x長さ182cm。
1階Y方向の側端部分の存在壁量は、左側は赤Aが壁倍率2倍x長さ546cm。緑Bが壁倍率4倍x長さ91cm。右側は赤Aが壁倍率2倍x長さ182cm。緑Bが壁倍率4倍x長さ364cm。


2階X方向の側端部分の存在壁量は、上側は赤Aが壁倍率2倍x長さ182cm。緑Aが壁倍率2倍x長さ136.5cm。下側は赤Aが壁倍率2倍x長さ364cm。
2階Y方向の側端部分の存在壁量は、左側は赤Aが壁倍率2倍x長さ455cm。右側は赤Aが壁倍率2倍x長さ364cm。


側端部分の存在壁量は下記の通りとなります。
階 | 方向 | 位置 | 壁記号 | 壁倍率 | 長さ(cm) | 耐力壁(cm) | 存在壁量(cm) |
① | ② | ①x②=③ | 合計 | ||||
2 | X | 上 | A | 2.00 | 182.00 | 364.00 | 637.00 |
A | 2.00 | 136.50 | 273.00 | ||||
下 | A | 2.00 | 364.00 | 728.00 | 728.00 | ||
2 | Y | 左 | A | 2.00 | 455.00 | 910.00 | 910.00 |
右 | A | 2.00 | 364.00 | 728.00 | 728.00 | ||
1 | X | 上 | A | 2.00 | 91.00 | 182.00 | 455.00 |
A | 2.00 | 136.50 | 273.00 | ||||
下 | A | 2.00 | 182.00 | 364.00 | 1,092.00 | ||
B | 4.00 | 182.00 | 728.00 | ||||
1 | Y | 左 | A | 2.00 | 546.00 | 1,092.00 | 1,456.00 |
B | 4.00 | 91.00 | 364.00 | ||||
右 | A | 2.00 | 182.00 | 364.00 | 1,820.00 | ||
B | 4.00 | 364.00 | 1,456.00 |
壁量充足率と壁率比の算出
各階・各方向の側端部分について、必要壁量と存在壁量が求まったら壁量充足率と壁率比を算出します。
階 | 方向 | 位置 | 有効面積(㎡) | 壁量係数(cm/㎡) | 地盤割増 | 必要壁量(cm) | 存在壁量(cm) | 壁量充足率 | 壁量 充足率 判定 【検定1】 |
壁率比 | 壁率比 判定 【検定2】 |
① | ② | ③ | ④=①x②x③ | ⑤ | ⑥=⑤÷④ | ⑥>1.00 | ⑦=⑥小÷⑥大 | ⑦≧0.5 | |||
2 | X | 上 | 13.25 | 27 | 1.0 | 357.75 | 637.00 | 1.78 | OK | (0.87) | (OK) |
下 | 13.25 | 27 | 1.0 | 357.75 | 728.00 | 2.03 | OK | ||||
2 | Y | 左 | 13.25 | 27 | 1.0 | 357.75 | 910.00 | 2.54 | OK | (0.79) | (OK) |
右 | 13.25 | 27 | 1.0 | 357.75 | 728.00 | 2.03 | OK | ||||
1 | X | 上 | 11.68 | 20(※) | 1.0 | 233.60 | 455.00 | 1.94 | OK | (0.72) | (OK) |
下 | 19.88 | 39 | 1.0 | 775.32 | 1,092.00 | 1.40 | OK | ||||
1 | Y | 左 | 13.25 | 39 | 1.0 | 516.75 | 1,456.00 | 2.81 | OK | (0.83) | (OK) |
右 | 19.88 | 39 | 1.0 | 775.32 | 1,820.00 | 2.34 | OK |
表中の壁量係数欄②の(※)は2階が乗らない領域のため平屋の係数を用いたことを表す。


作成例では『検定1』で適合ですが、仮に『検定1』でNGの場合でも『検定2』がOKであれば適合となります。
最後に
今回は壁配置バランスについて、四分割法を計算しました。
どうだったでしょうか。掛け算や割り算、足し算で計算できたので簡単だったのではないでしょうか。
次回は、壁量計算のN値計算について計算します。