木造 初めての住宅性能表示⑥(存在床倍率編)

スポンサーリンク

はじめに

住宅性能表示の耐震・耐風等級を2以上とする場合、床倍率のチェックを行う必要があります。

壁線に囲まれた区画の平均存在床倍率を求め、必要床倍率を上回っていることを確認します。

それでは、計算していきましょう。

↓この本も参考にしています。

平均存在床倍率について

平均存在床倍率の求め方は、床の仕様の組み合わせによって、4つのパターンがあります。

①aルート:1種類の仕様しかない場合
 計算式:存在床倍率=f1

②bルート:複数の仕様が耐力壁線に直交する線で区画される場合
 計算式:平均存在床倍率=(f1×L1+f2×L2)÷(L1+L2)

aルート
bルート

③cルート:複数の仕様が耐力壁線と平行な線で区画される場合
 計算式:平均存在床倍率=f1とf2のうち、小さい方

cルート

④dルート:複数の仕様が部分的に耐力壁線と平行な線で区画される場合
④-1:dルート1を水平方向に区画してdルート2のように区切ります。
④-2:区切った区画をさらに直交する区画に分割し、dルート3のように区切ります。
④-3:『1種類の仕様』と『直交する区画』に分けて計算します。
計算式A:存在床倍率=f1
計算式B:平均存在床倍率=(f1×L1+f2×L2)÷(L1+L2)
計算式Aと計算式Bのうち、小さい方

dルート1
dルート2
dルート3

平均存在床倍率の計算

水平床構面の仕様によって床倍率が決まっています。
吹抜け、階段室、外部の場合は、f=0として計算します。

今回は、下記の仕様を使用して計算します。

① 構面 ②種類 ③水平構面の仕様 ④床倍率
2階床構面 F1 構造用合板12mm以上又は構造用パネル1・2級以上、 2
根太@340以下落し込み、N50@150以下
F2 構造用合板24mm以上、根太なし直張り4周釘打ち、 3
N75@150以下
小屋床構面 M1 構造用合板12mm以上又は構造用パネル1・2級以上、 2
根太@340以下落し込み、N50@150以下
屋根構面 R1 5寸勾配以下、構造用合板9mm以上又は構造用パネル1・2・3級、 0.7
垂木@500以下転ばし、N50@150以下
火打構面 H1 火打金物、平均負担面積2.5㎡以下、梁せい150以上 0.6
H2 火打金物、平均負担面積3.3㎡以下、梁せい150以上 0.36
H3 火打金物、平均負担面積5.0㎡以下、梁せい150以上 0.18

2階床倍率

下図のように、X方向とY方向の耐力壁線で区画された床倍率を計算していきます。
X方向もY方向もaルートに該当するため、平均存在床倍率はR1とM1の床倍率の合計になります。

X方向2階
Y方向2階

数値を下表にまとめ、住宅性能表示⑤で求めた必要床倍率と比較します。

6-1 6-2 6-3 6-4 6-5 6-6 6-7
  耐力壁線
の通り
種類 床倍率 平均
存在床倍率
min 地震
必要床倍率
地震
判定

必要床倍率

判定
X方向2階 Y 7~2 M1 R1 2.00 0.70 2.70 2.70 2.70 1.05 0.67
Y 2~0 M1 R1 2.00 0.70 2.70 2.70 2.70 0.42 0.72
Y方向2階 X 0~5 M1 R1 2.00 0.70 2.70 2.70 2.70 1.05 1.07
X 5~8 M1 R1 2.00 0.70 2.70 2.70 2.70 0.63 0.46

1階床倍率

下図のように、X方向とY方向の耐力壁線で区画された床倍率を計算していきます。

床仕様が複数存在し、X方向もY方向もdルートに該当するため、まずは耐力壁線と平行な線で区画します。
X方向は3分割、Y方向は4分割に区画されます。

X方向1階(dルート2)
Y方向1階(dルート2)

次に、区切った区画をさらに直交する区画に分割します。

X方向の直交する区画は、Y7通りから、3分割、1分割、2分割に区画します。
Y方向の直交する区画は、X0通りから、2分割、3分割、2分割、1分割に区画します。

X方向1階(dルート3)
Y方向1階(dルート3)

数値を下表にまとめ、住宅性能表示⑤で求めた必要床倍率と比較します。

6-1 6-2 6-3 6-4     6-5 6-6     6-7 6-8     6-9 6-10 6-11
  耐力壁線の通り 種類 床倍率 壁線方向
距離
小計 種類 床倍率 壁線方向
距離
小計 種類 床倍率 壁線方向
距離
小計 平均
存在床倍率
min 地震
必要床倍率
地震
判定

必要床倍率

判定
X方向1階 Y 7~0 F1 H1 2.00 0.60 2.60 5.000 13.00 F2 H1 3.00 0.60 3.60 3.000 10.80   (13+10.8)÷8≒2.98 2.85 2.24 1.87
F2 H1 3.00 0.60 3.60 8.000 28.80   28.80÷8≒3.60
吹抜 H1 0.00 0.60 0.60 2.000 1.20 F2 H1 3.00 0.60 3.60 6.000 21.60   (1.2+21.6)÷8≒2.85
Y方向1階 X 0~8 F1 H1 2.00 0.60 2.60 2.000 5.20 F2 H1 3.00 0.60 3.60 5.000 18.00   (5.2+18)÷7≒3.31 2.46 2.56 不適 2.44
吹抜 H1 0.00 0.60 0.60 2.000 1.20 F1 H1 2.00 0.60 2.60 2.000 5.20 F2 H1 3.00 0.60 3.60 3.000 10.80 (1.2+5.2+10.8)÷7≒2.46
吹抜 H1 0.00 0.60 0.60 2.000 1.20 F2 H1 3.00 0.60 3.60 5.000 18.00   (1.2+18)÷7≒2.74
F2 H1 3.00 0.60 3.60 7.000 25.20   25.2÷7≒3.60

以上より、床倍率のチェックが完了しました。
判定が不適の場合は、吹抜けを小さくするか、床倍率の高い仕様に変更するか、火打を増やすか、再検討します。

最後に

今回は壁量計算の存在床倍率について計算しました。

どうだったでしょうか。掛け算や割り算、足し算で計算できたので簡単だったのではないでしょうか。

N値計算は、こちらを参照し、以上で性能表示の計算は終了とします。

タイトルとURLをコピーしました