はじめに
住宅性能表示の耐震・耐風等級を2以上とする場合、床倍率のチェックを行う必要があります。
壁線に囲まれた区画の平均存在床倍率を求め、必要床倍率を上回っていることを確認します。
それでは、計算していきましょう。
↓この本も参考にしています。
平均存在床倍率について
平均存在床倍率の求め方は、床の仕様の組み合わせによって、4つのパターンがあります。
①aルート:1種類の仕様しかない場合
計算式:存在床倍率=f1
②bルート:複数の仕様が耐力壁線に直交する線で区画される場合
計算式:平均存在床倍率=(f1×L1+f2×L2)÷(L1+L2)
③cルート:複数の仕様が耐力壁線と平行な線で区画される場合
計算式:平均存在床倍率=f1とf2のうち、小さい方
④dルート:複数の仕様が部分的に耐力壁線と平行な線で区画される場合
④-1:dルート1を水平方向に区画してdルート2のように区切ります。
④-2:区切った区画をさらに直交する区画に分割し、dルート3のように区切ります。
④-3:『1種類の仕様』と『直交する区画』に分けて計算します。
計算式A:存在床倍率=f1
計算式B:平均存在床倍率=(f1×L1+f2×L2)÷(L1+L2)
計算式Aと計算式Bのうち、小さい方
平均存在床倍率の計算
水平床構面の仕様によって床倍率が決まっています。
吹抜け、階段室、外部の場合は、f=0として計算します。
今回は、下記の仕様を使用して計算します。
① 構面 | ②種類 | ③水平構面の仕様 | ④床倍率 |
2階床構面 | F1 | 構造用合板12mm以上又は構造用パネル1・2級以上、 | 2 |
根太@340以下落し込み、N50@150以下 | |||
F2 | 構造用合板24mm以上、根太なし直張り4周釘打ち、 | 3 | |
N75@150以下 | |||
小屋床構面 | M1 | 構造用合板12mm以上又は構造用パネル1・2級以上、 | 2 |
根太@340以下落し込み、N50@150以下 | |||
屋根構面 | R1 | 5寸勾配以下、構造用合板9mm以上又は構造用パネル1・2・3級、 | 0.7 |
垂木@500以下転ばし、N50@150以下 | |||
火打構面 | H1 | 火打金物、平均負担面積2.5㎡以下、梁せい150以上 | 0.6 |
H2 | 火打金物、平均負担面積3.3㎡以下、梁せい150以上 | 0.36 | |
H3 | 火打金物、平均負担面積5.0㎡以下、梁せい150以上 | 0.18 |
2階床倍率
下図のように、X方向とY方向の耐力壁線で区画された床倍率を計算していきます。
X方向もY方向もaルートに該当するため、平均存在床倍率はR1とM1の床倍率の合計になります。
数値を下表にまとめ、住宅性能表示⑤で求めた必要床倍率と比較します。
6-1 | 6-2 | 6-3 | 6-4 | 6-5 | 6-6 | 6-7 | |||||||
耐力壁線 の通り |
種類 | 床倍率 | 計 | 平均 存在床倍率 |
min | 地震 必要床倍率 |
地震 判定 |
風 必要床倍率 |
風 判定 |
||||
X方向2階 | Y | 7~2 | M1 | R1 | 2.00 | 0.70 | 2.70 | 2.70 | 2.70 | 1.05 | 適 | 0.67 | 適 |
Y | 2~0 | M1 | R1 | 2.00 | 0.70 | 2.70 | 2.70 | 2.70 | 0.42 | 適 | 0.72 | 適 | |
Y方向2階 | X | 0~5 | M1 | R1 | 2.00 | 0.70 | 2.70 | 2.70 | 2.70 | 1.05 | 適 | 1.07 | 適 |
X | 5~8 | M1 | R1 | 2.00 | 0.70 | 2.70 | 2.70 | 2.70 | 0.63 | 適 | 0.46 | 適 |
1階床倍率
下図のように、X方向とY方向の耐力壁線で区画された床倍率を計算していきます。
床仕様が複数存在し、X方向もY方向もdルートに該当するため、まずは耐力壁線と平行な線で区画します。
X方向は3分割、Y方向は4分割に区画されます。
次に、区切った区画をさらに直交する区画に分割します。
X方向の直交する区画は、Y7通りから、3分割、1分割、2分割に区画します。
Y方向の直交する区画は、X0通りから、2分割、3分割、2分割、1分割に区画します。
数値を下表にまとめ、住宅性能表示⑤で求めた必要床倍率と比較します。
6-1 | 6-2 | 6-3 | 6-4 | 6-5 | 6-6 | 6-7 | 6-8 | 6-9 | 6-10 | 6-11 | |||||||||||||||||||
耐力壁線の通り | 種類 | 床倍率 | 計 | 壁線方向 距離 |
小計 | 種類 | 床倍率 | 計 | 壁線方向 距離 |
小計 | 種類 | 床倍率 | 計 | 壁線方向 距離 |
小計 | 平均 存在床倍率 |
min | 地震 必要床倍率 |
地震 判定 |
風 必要床倍率 |
風 判定 |
||||||||
X方向1階 | Y | 7~0 | F1 | H1 | 2.00 | 0.60 | 2.60 | 5.000 | 13.00 | F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 3.000 | 10.80 | (13+10.8)÷8≒2.98 | 2.85 | 2.24 | 適 | 1.87 | 適 | |||||||
F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 8.000 | 28.80 | 28.80÷8≒3.60 | ||||||||||||||||||||||
吹抜 | H1 | 0.00 | 0.60 | 0.60 | 2.000 | 1.20 | F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 6.000 | 21.60 | (1.2+21.6)÷8≒2.85 | |||||||||||||||
Y方向1階 | X | 0~8 | F1 | H1 | 2.00 | 0.60 | 2.60 | 2.000 | 5.20 | F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 5.000 | 18.00 | (5.2+18)÷7≒3.31 | 2.46 | 2.56 | 不適 | 2.44 | 適 | |||||||
吹抜 | H1 | 0.00 | 0.60 | 0.60 | 2.000 | 1.20 | F1 | H1 | 2.00 | 0.60 | 2.60 | 2.000 | 5.20 | F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 3.000 | 10.80 | (1.2+5.2+10.8)÷7≒2.46 | ||||||||
吹抜 | H1 | 0.00 | 0.60 | 0.60 | 2.000 | 1.20 | F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 5.000 | 18.00 | (1.2+18)÷7≒2.74 | |||||||||||||||
F2 | H1 | 3.00 | 0.60 | 3.60 | 7.000 | 25.20 | 25.2÷7≒3.60 |
以上より、床倍率のチェックが完了しました。
判定が不適の場合は、吹抜けを小さくするか、床倍率の高い仕様に変更するか、火打を増やすか、再検討します。
最後に
今回は壁量計算の存在床倍率について計算しました。
どうだったでしょうか。掛け算や割り算、足し算で計算できたので簡単だったのではないでしょうか。
N値計算は、こちらを参照し、以上で性能表示の計算は終了とします。