木造 初めての住宅性能表示⑤(必要床倍率編)

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はじめに

住宅性能表示の耐震・耐風等級を2以上とする場合、床倍率のチェックを行う必要があります。

床倍率とは、床の強さを表す指標です。

耐力壁が垂直方向の変形を抑制するのに対し、床倍率は水平方向の変形を抑制するのに抵抗します。

それでは、計算していきましょう。

↓この本も参考にしています。

耐力壁線のチェック

まずは、耐力壁線のチェックです。

耐力壁のある通りを『耐力壁線』と呼び、耐力壁線で挟まれた床面ごとに強度を検証するというものです。
耐力壁線間の距離が大きいほど、床の範囲が広がるため、床の強度を高めなければなりません。

耐力壁線とは、以下の2つの通りをいいます。

①建物の外周
②床長さの60%以上 かつ 4m以上の有効壁量を有するもの


各階・各方向ごとに、耐力壁線に該当するか確認します。

耐力壁があるX方向に線を引きます。
線を引いたところが端から端まで外壁である通りを『最外周壁線』といいます。
X方向2階でいうと、Y7・Y0通りは最外周壁線、Y2通りは最外周壁線になりません。

次に、各通りの耐力壁の存在壁量を求めます。

下図より、
X方向2階は、Y7通りに壁倍率2.5倍が8つ、Y2通りに壁倍率2.5倍が2つ、Y0通りに壁倍率2.5倍が3つとなります。
X方向1階は、Y7通りに壁倍率2.5倍が5つと壁倍率2倍が3つ、Y0通りに壁倍率2.5倍が4つと壁倍率2倍が3つとなります。

X方向2階 水平構面図
X方向1階 水平構面図

以上の数値より下表にまとめると”4-4”が各通りの存在壁量となります。

『”4-4”が”4-6”以上、かつ400cm以上』なら◎。
『”4-4”が”4-6”未満、又は400cm未満の最外周壁線』なら○。
『”4-4”が”4-6”未満、又は400cm未満の最外周壁線以外』なら×。

となります。

また、◎か〇の耐力壁線間距離が8m以下になっているか、チェックします。
(筋かいを用いない耐力壁の場合は12m以下で適)

4-1 4-2 4-3 4-4 4-5 4-6 4-7 4-8 4-9
      存在壁量     判定1    
    壁倍率xPi ”4-3”計xP     ”4-4”≧”4-6”
かつ
”4-4”≧400
耐力壁線間 耐力壁線間距離チェック
方向・階 通り 壁倍率W1 x P1 壁倍率W2 x P2

モジュール(cm)
P=100

奥行長さ ”4-5”x0.6 なら◎
そうでない外周回り○
距離(m) ”4-8”≦8
X方向2階 Y 7 2.5 8.00P 2   20.00 2,000.00 800.00 480.00 5
Y 2 2.5 2.00P 2   5.00 500.00 800.00 480.00 2
Y 0 2.5 3.00P 2   7.50 750.00 300.00 180.00    
X方向1階 Y 7 2.5 5.00P 2 3.00P 18.50 1,850.00 800.00 480.00 7
Y 0 2.5 4.00P 2 3.00P 16.00 1,600.00 800.00 480.00    

◎や○の耐力壁線で挟まれた範囲が1つの床区画として計算する範囲になります。

下図でいうと、
X方向2階では、Y7-Y2間の床区画1とY2-Y0間の床区画2。
X方向1階では、Y7-Y0間の床区画3について、必要床倍率を求めることになります。

X方向2階 水平構面図
X方向1階 水平構面図

次にY方向を確認します。

耐力壁があるY方向に線を引きます。
線を引いたところが端から端まで外壁である通りを『最外周壁線』といいます。
Y方向2階でいうと、X0・X8通りは最外周壁線、X5通りは最外周壁線になりません。

次に、各通りの耐力壁の存在壁量を求めます。

下図より、
Y方向2階は、X0通りに壁倍率2.5倍が3つ、X5通りに壁倍率2.5倍が2つ、X8通りに壁倍率2.5倍が5つとなります。
Y方向1階は、X0通りに壁倍率2.5倍が7つと壁倍率2倍が3つ、X8通りに壁倍率2.5倍が5つと壁倍率2倍が2つとなります。

Y向2階 水平構面図
Y方向1階 水平構面図

以上の数値より下表にまとめると”4-4”が各通りの存在壁量となります。

『”4-4”が”4-6”以上、かつ400cm以上』なら◎。
『”4-4”が”4-6”未満、又は400cm未満の最外周壁線』なら○。
『”4-4”が”4-6”未満、又は400cm未満の最外周壁線以外』なら×。

となります。

また、◎か〇の耐力壁線間距離が8m以下になっているか、チェックします。
(筋かいを用いない耐力壁の場合は12m以下で適)

4-1 4-2 4-3 4-4 4-5 4-6 4-7 4-8 4-9
      存在壁量     判定1    
    壁倍率xPi ”4-3”計xP     ”4-4”≧”4-6”
かつ
”4-4”≧400
耐力壁線間 耐力壁線間距離チェック
方向・階 通り 壁倍率W1 x P1 壁倍率W2 x P2

モジュール(cm)
P=100

奥行長さ ”4-5”x0.6 なら◎
そうでない外周回り○
距離(m) ”4-8”≦8
Y方向2階 X 0 2.5 3.00P 2   7.50 750.00 500.00 300.00 5
X 5 2.5 2.00P 2   5.00 500.00 700.00 420.00 3
X 8 2.5 5.00P 2   12.50 1,250.00 700.00 420.00    
Y方向1階 X 0 2.5 7.00P 2 3.00P 23.50 2,350.00 700.00 420.00 8
X 8 2.5 5.00P 2 2.00P 16.50 1,650.00 700.00 420.00    

◎や○の耐力壁線で挟まれた範囲が1つの床区画として計算する範囲になります。

下図でいうと、
Y方向2階では、X0-X5間の床区画4とX5-X8間の床区画5。
Y方向1階では、X0-X8間の床区画6について、必要床倍率を求めることになります。

Y方向2階 水平構面図
Y方向1階 水平構面図

以上より、耐力壁線のチェックが終わり床区画が決まりましたので、床倍率の検討を行っていきます。

必要床倍率

必要床倍率は、地震と風に関するものを求めていきます。

先ほど求めた床区画ごとに必要床倍率を求めていきます。

係数α

係数αとは、各床区画に関係する、上下階における耐力壁線の配置等の条件を必要床倍率に反映させるための係数です。

係数α

【2階、平屋】
両側◎:1
片側○:2
【1階、下屋】
両側◎かつ上階に耐力壁線なし:0.5
両側◎かつ上階に耐力壁線あり:1
片側○:2

下図より、2階は『両側◎』なので係数αは1。1階は『両側◎かつ上階に耐力壁線あり』なので係数αは1となります。

Y通り
X通り

係数CE

地震に対する単位面積当たりの必要壁量を200で割った数値になります。

必要壁量は、耐震等級2・3の計算 “3-14″参照し、ここでは省略します。

係数CW

地域の基準風速と階数に応じた風圧力の係数CWは、下表から選択します。計算例は風速36m/sとします。

    V0≦30 V0≦32 V0≦34 V0≦36 V0≦38 V0≦40 V0≦42 V0≦44 V0≦46
平屋建て   0.75 0.84 0.94 1.07 1.18 1.31 1.45 1.59 1.73
2階建て 1階 1.49 1.68 1.88 2.13 2.36 2.61 2.89 3.17 3.45
2階 0.75 0.84 0.94 1.07 1.18 1.31 1.45 1.59 1.73

まとめ

以上の数値より、下表にまとめると

  地震に対する必要床倍率 風に対する必要床倍率
6-1 6-2 6-3 6-5 6-6 6-7 6-8 6-9 6-10 6-11 6-12 6-13
  耐力壁線の通り 床区画 係数α 耐力壁線間
距離(m)
壁線方向
距離(m)
地震に対する
単位面積当たりの
必要壁量(cm/㎡)
CE 必要床倍率 V0 CW 必要床倍率
          (奥行) (長さ) “3-14″参照 “6-8″/200 “6-5″*”6-6”
*”6-9″
    “6-5″*”6-12”
*”6-6″/”6-7″
X方向2階 Y 7~2 1 1 5.000 8.000 41.70 0.21 1.05 36 1.07 0.67
Y 2~0 2 1 2.000 3.000 41.70 0.21 0.42 36 1.07 0.72
X方向1階 Y 7~0 3 1 7.000 8.000 62.10 0.32 2.24 36 2.13 1.87
Y方向2階 X 0~5 4 1 5.000 5.000 41.70 0.21 1.05 36 1.07 1.07
X 5~8 5 1 3.000 7.000 41.70 0.21 0.63 36 1.07 0.46
Y方向1階 X 0~8 6 1 8.000 7.000 62.10 0.32 2.56 36 2.13 2.44

以上より、必要床倍率が求まりました。

最後に

今回は必要床倍率を計算しました。

どうだったでしょうか。掛け算や割り算、足し算で計算できたので簡単だったのではないでしょうか。

次回は、住宅性能表示の存在床倍率について計算します。

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