はじめに
日本の住宅は、2050年カーボンニュートラルな社会を目指すという目標に向けて、政府は、住宅分野での省エネを推進する様々な政策を展開しています。
そのため、省エネ法で定められた省エネ基準に適合する建物でないと建設できない時代がやってきます。
その第1弾として、300㎡以上の住宅の新築等において、省エネ計画の届出が義務化されました。
つまり、省エネの届出をしないと建物が建てれないということです。
省エネ基準
省エネ性能の指標には、『外皮性能』と『一次エネルギー消費量』の2つの基準があります。
主に、外皮性能は『住宅の外壁や窓などの断熱性能を評価』し、一次エネルギー消費量は『設備機器のエネルギー消費量を評価』する基準になります。
外皮性能
「外皮」とは建物の内部と外部を分けている境界のことです。
外部と内部をつなぐものとして、外壁、床、天井、屋根、窓、玄関などが挙げられます。
建物からの熱の逃げやすさを表しており、値が小さいほど良い。
一次エネルギー消費量
生活で消費するエネルギーには暖房、冷房、換気、照明、給湯による設備のエネルギー消費量と、調理、家電による家電等エネルギー消費量、太陽光発電などのエネルギー消費量の削減量があります。
これらのエネルギーである電気「KWh」やガス「m3」などを、一次エネルギー消費量「MJ」「GJ」に換算することで、合計して計算します。
もちろん、値が小さいほど良いです。
再生エネルギー等を導入して、年間の一次エネルギーをゼロにすることがZEH(ゼッチ)基準と言われています。
外皮計算とは
外皮計算とはその住宅の断熱性能がどのくらいであるかを計算することです。
家の各部位(屋根・壁・基礎・開口部)から逃げる熱を合計し、外側を覆う面積で割ることで単位面積当たりの熱が逃げる量を計算します。
計算は「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「平均日射熱取得率 (ηA値)」を算出します。
「外皮平均熱貫流率(UA値)」は従来の「熱損失係数(Q値)」に変わる指標で、数値が小さいほど性能が高いことを表しています。
従来計算との主な違いは、「熱損失係数(Q値)」は、熱損失量を床面積で除して求めていましたが、「外皮平均熱貫流率(UA値)」は熱損失量を外皮面積で除して求めます。
「熱損失係数(Q値)」計算では、床面積の大きな家が数値的に有利になる傾向がありましたが、「外皮平均熱貫流率(UA値)」では、建物規模によるばらつきは出にくいという特徴があります。
外皮平均熱貫流率(UA値)
建物からの熱の逃げやすさを表しており、値が小さいほど良い。
平均日射熱取得率 (ηイータA値)
夏の太陽の熱がどのくらい入りにくいかを表しており、値が小さいほど良い。
断熱性能
住宅において断熱は、熱を伝わりにくくして「夏は涼しくて、冬は暖かい」状態を実現することを指します。これにより、夏は室内の温度上昇を防ぎ、冬は冷気から室内を守ります。
では、断熱は何のためにするのか。
冬は暖かい
断熱した住宅は、冬場に熱を外部に放出しないため、家が暖まりやすく暖房代が安くなります。
すき間からの空気の流入や侵入を防ぐため、気密性が高まり、室内の温度差が小さくなります。
お風呂場が震えるほど寒い住宅はヒートショックを引き起こしやすいですが、部屋ごとの温度差が小さいとヒートショックになりにくく、身体への負担や疾病のリスクも少なくなります。
夏は涼しい
断熱は夏も外気熱の影響を受けにくいため、涼しく快適に過ごせます。必要以上にエアコンで部屋の温度を下げる必要がなく冷房代が安くなります。
断熱をしていないと暖められた外壁、屋根、窓などの熱により、部屋の温度が上がってしまいます。
電化製品が長持ち
断熱された住宅は、温度を保つために冷暖房器具を使用する時間や頻度が少なく、設定温度を必要以上に上げ下げすることが少なく、機器への負担が軽減されます。
また、冷暖房費が安くなり、冷暖房機器そのものの寿命を延ばすことになります。
結露には注意が必要
結露は冬場に、室内と室外で温度差が大きい場合に発生します。断熱材等により熱が伝わりにくくなった住宅は、室内の温度が一定に保たれます。
ただ、断熱効果が高まると、外と家の中の温度差が大きくなり、昔の家よりも結露が発生しやすくなります。
単に断熱材を詰めただけでは、室内と外気温の温度差を発生させるだけではなく、湿気を防ぐことが出来ていない為、木材や断熱材に湿気が入り、カビなどが発生しやすく家が傷む原因になります。
外壁と断熱材の間に通気層を設け換気をよくし、断熱材と室内壁の間には防湿フィルムを張り詰めて湿気も入り込ませないという対策を行いましょう。
結露はカビやダニの原因ともなるため、家の寿命を縮めることにもつながります。
家を長く快適に過ごすためには、結露を発生させないことが大切です。
まとめ
外皮計算は、断熱性能がどのくらいであるかを知ることができます。
断熱性能が高ければ、夏は室内の温度上昇を防ぎ、冬は冷気から室内を守ります。
冷暖房の負荷が下がり、省エネにつながります。
断熱の方法や素材により、メリット・デメリットはありますが、断熱を施工する際は特徴などを踏まえたうえで検討しましょう。