建築業界において、デジタル技術の進歩は効率化と生産性向上の重要な要素となっています。
その中でも、建築CADは、設計や図面作成のプロセスを革新し、効率化を実現するための強力なツールです。
しかし、JWWCADやAUTOCADなど2次元CADから進歩しておらず、業務効率化が図れていません。
そこで、建築業界の未来を形作るテクノロジーとしてBIMと建築3DCADに注目し、業務効率化するためにどっちを選ぶべきか、解説していきます。
BIMとは
BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、コンピューターの中に建物の3Dモデルで表現して、設計や施工を 進めていくもので、建築や建設プロジェクトのデジタル化を通じて情報を一元管理し、効率化や協力を促進するための手法です。
図面の作成は、積み木を配置していくイメージで3Dを作成し、そのモデルを水平方向にカットすることで平面図、垂直方向にカットすると断面図が生成される仕様です。
BIMはアメリカが発祥の地とされています。
建築業界では、建物を作るのに他の工業製品とは違って、工場で機械的に作ることができません。それで、建築業界は他の産業に比べて生産性が低いんです。また、設計と施工の仕事が別れているため、うまく効率的に進まないという問題もありました。
アメリカは契約を大事にする社会で、担当業務にのみに責任が発生します。
それが原因で、明らかな設計の間違いが見つかっても、情報を共有せずにそのまま建物を作ってしまうことがありました。そして、設計と施工の情報をしっかり共有できるようなシステムが必要でBIMが誕生しました。
日本の建築業界では、設計と施工が別々の業者に発注される場合でも、お互いに補助し合うという文化があります。そのため、BIMの導入による情報を共有する必要があまり感じられないのかもしれません。
建築3DCADとは
建築3DCAD(Computer-Aided Design)は、建築設計においてデジタル技術を活用するためのツールです。従来の手描き図面から、3次元モデルを作成することができます。これにより、建築物の仮想的な空間を詳細に可視化し、設計の精度や効率を向上させることができます。
図面の作成は、間取を作成すると自動で壁や屋根が作成され、3Dや2Dの図面が作成される仕様です。
建築3DCADは、日本で独自に発展した製品群です。
この3DCADは、他の国から広まったBIM(建築情報モデリング)という考え方とは違い、データの互換性や流通性に問題があります。BIMでは、建物に関する情報を一つのデータモデルにまとめ、設計者や建設業者が情報を共有することが得意ですが、このような情報の共有や流通がうまくできません。
しかも、日本の3次元CADのメーカーは、BIMの仕様にあまり関心を持っていないため、BIMのメリットを体験するための取り組みも進んでいないのです。
BIMと建築3DCADはどう違うのか
まず、3DCADはどういうイメージをお持ちだろうか。
昔の3DCADと言えば、X方向Y方向Z方向の座標に線を引いて3次元にしていく手法をイメージされると思います。
現状の建築3DCADは日本独自に発展し、3DCADでありながらモデルを自動で作成するものへと変化しています。
つまり、日本独自に進化を遂げてBIM並みのシステムが構築されたのが建築3DCADだと言えます。ツールとしてランクをつけるとすると以下のようなイメージです。
2次元CAD < 3次元CAD < 建築3DCAD ≦ BIM
簡単に言えば、「建築3DCAD+属性データ=BIM」となります。
属性データとは、名称、寸法、仕様、性能、個数などの情報データのことで、図面を書きながら登録していく必要があります。
つまり、属性データを使用しないのであれば、BIMも建築3DCADと3Dモデルを作成するという意味では同じなのです。
BIMを進めない理由
①BIMは、海外メーカーソフトがほとんどなので日本人には少し使いにくい仕様となっています。
3Dで図面を作成するので設定が多く、手間がかかります。小規模なら2Dの方が早いこともあります。
意匠設計用で唯一の国産BIMとして福井コンピュータの「GLOOBE」がありますが、BIMとしては少し使いにくいかもしれません。
実は、建築3DCADである福井コンピュータの「アーキトレンド ゼロ」に近い操作性なので、海外メーカーとは異質の操作になっています。
②BIMで作成した国際標準のIFCデータで意匠、構造、設備と連携することができますが、これもあまり進んでいません。
その理由としては、
・構造の実務では独自の構造計算ソフトを使用しており、3Dまで必要ないためBIM導入は積極的ではありません。
・設備(電気、給排水衛生)の実務では独自の3次元ソフトを使用しており、BIM導入に積極的ではありません。
・日本メーカーは独自ソフトを開発しており、IFCデータ規格に変換できる機能を作るのに積極的ではありません。上記の福井コンピュータが良い例です。同じ会社でBIMと建築3DCADを作っています。それは、日本独自に発展してきた建築3DCADが素晴らしいから変わる必要がないということです。
つまり、BIMは連携ができなければただの3DCADなので、ツールを活用できないのであればお勧めできません。
BIMを導入する前に検討すること
①BIMで何をしたいのか。プレゼン、業務効率化、干渉チェックなど
②BIMで作成する構造や規模はどれくらいか。非木造、大型物件が多いかなど
③BIMで連携する企業(構造系)があるか。構造設計事務所、プレカット、ファブなど
④BIMで連携する企業(設備系)があるか。設備設計事務所、電気工事、給排水衛生工事など
以上、検討してみてください。
比較表
下表に項目ごとの評価をしてみました。
項目 | BIM | 建築3DCAD | 2次元CAD |
値段 | ○ | ○ | ◎ |
50万円~ | 50万円~ | 無料~ | |
操作性 | △ | ○ | △ |
設計者が使用する ため、素人では 操作が難しい |
間取を入力すると 建物が 出来上がるので、 素人でも操作が容易 |
素人でも操作は |
|
作業時間 | △ | ○ | × |
2次元CADより 2.5倍 時間短縮できる |
2次元CADより 5倍 時間短縮できる |
手描きよりは早いが 時間がかかる |
|
プレゼン | △ | ○ | × |
図面作成と合わせて パース作成できる |
間取を入力すると パースが出来上がる |
パース作成は難しい | |
見積連携 | △ | ○ | × |
入力項目が多く、 複雑 |
CADとセット販売が 多く、連携が得意 |
ほぼ連携はない | |
構造連携 | ○ | ○ | × |
IFCデータで 連携が可能 |
CADとセット販売が 多く、連携が得意 |
ほぼ連携はない | |
設備連携 |
○ | × | × |
IFCデータで 連携が可能 |
|
ほぼ連携はない | |
構造 | ○ | △ | ○ |
木造、RC造、S造に 対応している |
木造メインが多いが、 RC造やS造に 対応している ものもある |
木造、RC造、S造に 対応している |
|
規模 | △ | △ | ○ |
大規模建築向き (延べ500㎡・ 5階建て以上) |
小規模建築向き (木造2階建て程度) |
手描きと同じように 何でも描ける |
要約すると、工事の規模にもよりますが、鉄骨造・RC造ならBIM、木造なら建築3DCADをお勧めします。
さらに、2次元CADも使用し、二刀流でこなすことが業務効率が上がるでしょう。
まとめ
BIMと建築3DCADについて紹介しましたが、どちらのツールを使うかは用途や規模に応じて選定しましょう。
これからはBIMの時代と言われていますが、建築の全てがBIMになっていくわけではありません。
自社だけでなく、元請会社や協力会社とともに便利なツールとなるよう、鉄骨造・RC造ならBIM、木造なら建築3DCADを検討してみましょう。
↓もっと詳しく知りたい方は下記を参照ください。