はじめに
壁量計算にて存在壁量が必要壁量より多いことが確認できれば、次は壁配置バランスをチェックします。
壁配置バランスのチェックには、四分割法と偏心率のどちらかで確認する必要があります。
今回は四分割法について計算していきます。
↓この本も参考にしています。
四分割法とは
各階X方向とY方向に4等分割し、その両端部分(1/4側端部分)の存在壁量と必要壁量を計算し、存在壁量を必要壁量で除した数値(壁量充足率)が1を超えればOKとなる。
壁量充足率が1以下の場合は、壁量充足率の小さい方を大きい方で除した値(壁率比)が、0.5以上であることを確認する。
つまり、
壁量充足率>1.0
または、
存在壁量/必要壁量=壁量充足率(大)
存在壁量/必要壁量=壁量充足率(小)
壁率比=壁量充足率(小)/壁量充足率(大)≧0.5
壁配置バランス計算(四分割法)
まず、各階のX方向とY方向で両端から1/4の範囲内にある存在壁量と必要壁量を求めます。
そして、両端の1/4部分を側端部分という。
計算式は、
側端部の必要壁量=側端部の床面積×地震力用係数。
側端部の存在壁量=『長さ×壁倍率』の合計。
それでは、計算していきましょう。
左図の赤枠部分がX方向1階側端部の床面積を表しており、
X方向1階上側:8m×1.75m=14㎡(a,b,c)
X方向1階下側:8m×1.75m=14㎡(g,h,i)
となります。
右図の赤枠部分がX方向1階側端部の耐力壁を表しており、
X方向1階上側:1m×2.5倍×5カ所
X方向1階下側:1m×2.5倍×4カ所
左図の赤枠部分がX方向2階側端部の床面積を表しており、
X方向2階上側:8m×1.75m=14㎡(j,k,l)
X方向2階下側:3mx1.75m=5.25㎡(q,r)
となります。
右図の赤枠部分がX方向2階側端部の耐力壁を表しており、
X方向2階上側:1m×2.5倍×8カ所
X方向2階下側:1m×2.5倍×3カ所
左図の赤枠部分がY方向1階側端部の床面積を表しており、
Y方向1階左側:7m×2m=14㎡(a,d,g)
Y方向1階右側:7m×2m=14㎡(c,f,i)
となります。
右図の赤枠部分がY方向1階側端部の耐力壁を表しており、
Y方向1階左側:1m×2.5倍×7カ所
Y方向1階右側:1m×2.5倍×5カ所
左図の赤枠部分がY方向2階側端部の床面積を表しており、
Y方向2階左側:5m×2m=10㎡(j,m,l)
Y方向2階右側:7mx2m=14㎡(l,p,r)
となります。
右図の赤枠部分がY方向2階側端部の耐力壁を表しており、
Y方向2階左側:1m×2.5倍×3カ所
Y方向2階右側:1m×2.5倍×5カ所
以上の数値より計算結果をまとめて壁量充足率を求めていきます。
壁倍率 | 長さ (cm) | 個所数 | 存在壁量 (cm) | 1/4床面積 | 地震力用係数 (cm/㎡) | 必要壁量 (cm) | 壁量充足率 | 判定 | |||
階 | 方向 | ① | ② | ③ | A=①x②x③ | ④ | ⑤ | B=④x⑤ | A/B | 両側共>1 | |
1 | X | 上側 | 2.5 | 100 | 5 | 1,250.00 | 14.00 | 29 | 406.00 | 3.08 | 適 |
下側 | 2.5 | 100 | 4 | 1,000.00 | 14.00 | 29 | 406.00 | 2.47 | 適 | ||
2 | X | 上側 | 2.5 | 100 | 8 | 2,000.00 | 14.00 | 15 | 210.00 | 9.53 | 適 |
下側 | 2.5 | 100 | 3 | 750.00 | 5.25 | 15 | 78.75 | 9.53 | 適 | ||
1 | Y | 左側 | 2.5 | 100 | 7 | 1,750.00 | 14.00 | 29 | 406.00 | 4.32 | 適 |
右側 | 2.5 | 100 | 5 | 1,250.00 | 14.00 | 29 | 406.00 | 3.08 | 適 | ||
2 | Y | 左側 | 2.5 | 100 | 3 | 750.00 | 10.00 | 15 | 150.00 | 5.00 | 適 |
右側 | 2.5 | 100 | 5 | 1,250.00 | 14.00 | 15 | 210.00 | 5.96 | 適 |
壁量充足率が求まりました。今回は、壁量充足率>1.0だったので、バランスは安全だと言えます。
参考に壁率比もチェックしてみましょう。壁率比=壁量充足率(小)/壁量充足率(大)≧0.5
壁量充足率 | 壁率比 | 判定 | |||
階 | 方向 | A/B | 壁量充足率(小)/壁量充足率(大) | ≧0.5 | |
1 | X | 上側 | 3.08 | 計算式:2.47/3.08=0.80 | |
下側 | 2.47 | (0.80) | 適 | ||
2 | X | 上側 | 9.53 | 計算式:9.53/9.53=1.00 | |
下側 | 9.53 | (1.00) | 適 | ||
1 | Y | 左側 | 4.32 | 計算式:3.08/4.32=0.71 | |
右側 | 3.08 | (0.71) | 適 | ||
2 | Y | 左側 | 5.00 | 計算式:5.00/5.96=0.84 | |
右側 | 5.96 | (0.84) | 適 |
壁率比も全て0.5以上だったので、バランスは安全です。
最後に
今回は壁配置バランスについて、四分割法を計算しました。
どうだったでしょうか。掛け算や割り算、足し算で計算できたので簡単だったのではないでしょうか。
もし、壁配置バランスチェックで『不適』になった場合は、偏心率という計算方法で確認することが可能です。偏心率で『適』の判定になれば、四分割法で『不適』でもバランスは安全ということになります。
次回は、壁量計算の偏心率について計算します。