はじめに
2025年法改正により構造関係の仕様規定が審査されることになりました。
木造平家・2階建て、延べ面積300m2以下の建物は、最低限仕様規定で構造関係規定を満足する必要があります。

検討内容は、壁量計算、壁配置バランス、柱頭・柱脚金物の選択、柱の小径等を検討して、建物が構造上安全であることを確認します。それが壁量計算、四分割法・偏心率、N値計算、柱の小径、柱の有効細長比となります。
これは構造計算をするより簡易な計算方法で構造に関する事をチェックできるようになっています。
壁量計算って、ものすごく難しいのではと考えているあなた、この計算は高校数学ができれば簡単にできます。
今回はその壁量計算の必要壁量について計算していきます。
↓この本も参考にしています。
壁量計算用床面積(基準法)
壁量計算用の床面積は、大きく2つの方法に分かれます。基準法の壁量計算と性能表示に基ずく壁量計算です。
基準法の壁量計算用床面積は、性能表示の床面積が『見上げ面積』に対して『見下げ面積』となります。


『見下げ面積』の場合、
1階の床面積には、2階オーバーハング、外部(玄関ポーチ)は含まれません。
2階の床面積には、吹抜け、バルコニーは含まれません。
左図の1階平面図の『見下げ面積』として、壁量計算用床面積を求めていきます。
右図が壁量計算用の1階床面積図となります。
壁量計算用の床面積は69.23㎡となります


左図の2階平面図の『見下げ面積』として、壁量計算用床面積を求めていきます。
右図が壁量計算用の2階床面積図となります。
壁量計算用の床面積は53㎡となります。



地震力に対する壁量の算出
床面積から、各階の地震力に対する必要壁量を算出します。
地震力に対する必要壁量(cm)=各階の床面積(m2)x 床面積あたりの必要壁量(cm/m2)
床面積あたりの必要壁量は、下記の早見表から抜粋した平屋20,1階39,2階27の係数を採用します。
階 | 床面積(㎡) | 係数(cm/㎡) | 必要壁量(cm) |
① | ② | ①x② | |
2 | 53.00 | 27 | 1,431.00 |
1 | 69.23 | 39 | 2,699.97 |
地震力による必要壁量が求まりました。

法改正の内容:「軽い屋根」「重い屋根」の区分から荷重の実態に応じて算定が必要となります。
①算定式から求める方法、②早見表から求める方法、③表計算ツールから求める方法
璧量等の基準(令和7年施行)設計支援ツール|公益財団法人日本住宅・木材技術センター(公式ホームページ)

建物の見付面積
次に風圧力に対して必要な耐力壁の量を計算しますが、風圧力については、建物の見付面積を計算する必要があります。
見付面積はX方向とY方向それぞれの面積を求めます。面積は垂直投影面積で、各階の床面の高さから1.35m以下の部分を除いた面積を求めます。イメージとしては、風が建物を押す範囲になります。
つまり、X方向の見付面積は、下パース図でいうと1階はグリーン部分+レッド部分、2階はレッド部分になります。



Y方向の見付面積は、下パース図でいうと1階はグリーン部分+レッド部分、2階はレッド部分になります。



風圧力に対する壁量の算出
建築物の風を受ける面の面積(見付面積)から、各階・各方向の風圧力に対する必要壁量を算出します。
風圧力に対する必要壁量(cm)=見付面積(m2)x見付面積に乗ずる値(cm/m2)
先ほど求めた見付面積に風圧力用係数を掛けます。
今回はその他地域を採用します。
特定行政庁が特に強い風が吹くと定めた地域 | 50~75 |
その他の地域 | 50 |
見付面積に乗ずる値(cm/m2)
階 | 方向 | 見付面積(㎡) | 係数(cm/㎡) | 必要壁量(cm) |
① | ② | ①x② | ||
2 | X | 19.04 | 50 | 952.00 |
2 | Y | 19.04 | 50 | 952.00 |
1 | X | 51.06 | 50 | 2,553.00 |
1 | Y | 41.02 | 50 | 2,051.00 |
風圧力による必要壁量(その他地域)
風圧力による必要壁量が求まりました。
必要壁量の決定
各階・各方向の地震力に対する必要壁量と、風圧力に対する必要壁量を比較して、大きい値の地震力の必要壁量を採用します。
階 | 方向 | 地震力(cm) | 記号 | 風圧力(cm) | 必要壁量(cm) | 大きい方 |
① | ② | 決定 | ||||
2 | X | 1,431.00 | > | 952.00 | 1,431.00 | 地震力 |
2 | Y | 1,431.00 | > | 952.00 | 1,431.00 | 地震力 |
1 | X | 2,699.97 | > | 2,553.00 | 2,699.97 | 地震力 |
1 | Y | 2,699.97 | > | 2,051.00 | 2,699.97 | 地震力 |
最後に
今回は壁量計算の必要壁量について計算しました。
どうだったでしょうか。掛け算や割り算、足し算で計算できたので簡単だったのではないでしょうか。
次回は、壁量計算の存在壁量について計算します。